初めは、それはもうユーリは嫌がった。某野球監督程の猛烈な勢いはなかったが、散々抗議を申し立てた。
が、コンラッドはそれでも引き下がらなかった。履いて見せてくれなければ無理矢理履かせてやるまで、と思っていそうな真っ黒い笑顔に…最終的にユーリが負けた。
「…履いた?」
「……見るだけだからな」
「はいはい。で、もうそっちを向いてもいい?」
「…いいよ」
コンラッドは座ったまま身体の向きを180度変えた。
彼の視界に、壁際に立っているユーリの姿が飛び込む。上半身は青いTシャツのままだったが、下はコンラッドのお願い通り、例のヒモパンを着用しているだけだった。
「変だろ、絶対変だろ!?」
「いいえ、よく似合ってるよ」
似合わないと言ってくれれば、すぐにでも脱げるものを。
「よく見えないな。もっと近くで見せて」
そう言って、コンラッドの方からユーリに寄って行った。
「コンラッド、近づきすぎだって…」
コンラッドの手がユーリの腰を掴むように置かれる。何をするのかと、ユーリが訝しむような暇はなかった。いきなりコンラッドが、口唇で下着越しにユーリのものを愛撫し始めたからだ。
「なな、何してんだよ!?」
今はまだ昼間で、カーテンは開いていて、1階には母親がいる。ユーリが抵抗しない訳はなかったが、腰を捉えるコンラッドの力は強く、しかも後ろは壁であった為、容易に逃げられなかった。
本気で殴ってでも逃れるべきかどうか、ユーリが迷う内に、体の方が次第にコンラッドに懐柔されていく。布一枚の向こうに感じるコンラッドの唇の動きだけではなくて、腰や脚を撫でる手の動きも、ユーリを翻弄していった。
頭では解っていた。だが、全力で拒めない。えも言われぬ感覚に蹌踉めいて、壁にもたれてしまう。
「っ…下に、おふくろがいるのに……!」
「でも、ユーリのここは止めてほしくないみたいだけれど?」
そう言うと、コンラッドは口で下着の紐を咥えて引っ張り、結び目を解いた。片方を解いただけで、下着は床へひらりと落ちた。
引き出されたユーリの情欲が、直接的な口での愛撫で更に高められる。
「…っ…ふ……う……」
体重の幾らかを壁に預けて、ユーリは上向き加減に喘いだ。声をなるべく抑えながら。
ぎゅっと閉じた瞼に、窓から差し込む灼けるような日差しを感じる。
…あつい。
何か掴む物が欲しかったが、何もない。ユーリはただ拳をつくって、荒く息をついた。
達した後、ユーリの身体から一気に力が抜け、立っていられなくなって、ずるりと座り込んだ。
そんなユーリの姿がコンラッドにはたまらなかった。
少し悪戯する位の軽い気持ちで仕掛けた事なのに、欲望に火がついてしまった。
その頃、美子ママはダイニングテーブルの席について、ゆったりとアイスコーヒーを飲みつつ、夕刊を読んでいた。
可愛い二番目の息子の恋人が男性だった事には、流石の彼女も、それはもう驚かされた。
だが、あれだけのハンサムな好青年に『お母様』と呼ばれるのは、最高の気分だった。
早く息子の口から、馴れ初めやら何やら色々と聞きたいものだ。
そう言えば冷凍庫にアイスクリームがある。出した方が良いかなと思いながら、彼女が手元のグラスのストローに手を添えた時……2階からドスンバタンという物音がした。
そう、まるで、床の上でのたうち回っているような物音。
「……」
アイスを持っていける状況では無さそうだ。
やだわ、もう。2人共若いんだから…
1人で少女のように赤面する美子ママ。
アレコレと妄想を繰り広げながら、新聞の投書欄に再び視線を戻した。
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ディモルフォセカをくれた君(25)
すいません短くて…。