「セフェラン、やっと来たのじゃな!」
裾を踏んで転びそうになりながら、サナキは草の上を駆けてセフェランの元に走り寄った。そうして彼の白い法衣の裾に抱きつき、セフェランに頭を撫でられるとくすぐったそうに微笑んだ。
「サナキ様、あまり走られると転びますよと、いつも申し上げているのに…」
「転ぶくらい、わたしは気にせぬ。それより早く、早く一緒に遊ぶのだ!」
まだ小さい手がセフェランの服の裾を熱心に引っ張ってくる。自然とセフェランの顔も綻び、優しい笑顔を浮かべた。
「分かりました。それで、今日はどうなさいますか?」
「おんぶじゃ!」
え。
その日の夜。
「セフェラン様、私です。夜分に失礼致します」
そう言ってゼルギウスがセフェランの私室に入ると、部屋の主は寝台に倒れ伏していた。
「セフェラン様!?」
ゼルギウスは慌てて寝台に駆け寄り、セフェランの体を抱き起こそうとした…が、その時。
「痛っ! 痛い、ゼルギウス、手を放しなさい!」
「えっ…?」
ゼルギウスはぱっとセフェランから手を放した。すると、セフェランはしばし何やらうんうん呻いていたが、やがてよろよろと体を起こして寝台の上に起き直った。
ゼルギウスは寝台の前に片膝をつき、それから顔を上げて
「我が主よ…一体、どうなさったのですか」
と、セフェランに訊いた。
「今日はサナキ様のお相手をしましてね…少し、無理をし過ぎました。腰が痛くて…子供の遊びの相手というのは、随分疲れるものなのですね…」
そう言ってセフェランは苦笑した。彼は一瞬遠くを見るような目つきになったが、すぐに意識を現在に戻し、ゼルギウスを見た。
「すみませんがゼルギウス、水をもらってきてくれませんか。それと、今夜の夕食は要らないと伝えてください」
「よろしいのですか?」
「ええ」
その代わりこれがありますから、と言って、セフェランは寝台の脇の机のユクの実を指さした。
セフェラン様はテリウス大陸最強の生き物だと思います。
ちなみに一番美人なのもセフェラン様だと思います。ラフィエル兄上とどっちが上か悩みましたが。
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by 非公開 2016.08.09 00:58 Edit