記事一覧

テリウス昔話「木幡狐」(3)


続き

それからしばらく経った、お昼頃のことでした。
ティバーン、ヤナフ、ウルキという名前の三人の男性が、山道を通りました。
この山道は切り開かれて開けていますが、少し道を外れれば深い森林が広がっています。
この付近の山には昔から、人の言葉を解する鷺が住んでいるという伝説があります。なんでも、夜遅くにこの辺りを通りかかると、鷺が美しい人間の姿に化けては道行く人をたぶらかすのだそうです。
ですが、三人の誰もそんな伝説を信じてはいませんでしたし、もちろん人に化けた鷺など見たこともありませんでした。信じているのは、一部の年寄り連中ぐらいのものでしたから。
さて、三人が歩いていると、ヤナフが道端に立っている木の傍に誰かが立っているのに気付きました。
光るような金色の長い髪をした、とても美しい青年でした。あまりに美しいので、一瞬幻覚か何かを見たのかと三人は思ってしまいました。
その青年は、こっちの方をじーっと見ていました。誰かを待っているのかと思いましたが、その目は間違いなく三人を追っています。
何か自分たちに用でもあるのだろうか。そう思ったティバーン達は、青年に近づいていきました。
「どうかしたのか?」
ティバーンがそう訊くと、青年は何か言いました。
ところが、それはティバーン達三人の知らない言語でした。なので、青年が何を言っているのか、三人にはさっぱり理解出来ませんでした。
「すまん…お前が何言ってるのか、さっぱり分からん。…つうか、これも通じてるのか?」
すると、青年は首を縦に振りました。どうやら、青年の方はティバーン達の言葉が解るようでした。
「そうか。で、お前、俺たちに何か用なのか?」
「ティバーン…何か用かと訊かれても、言葉が違えば答えようがないのではないか?」
端からウルキがそう指摘しました。
「ああ、そうか。…でも、言葉が違うってことは…とりあえずお前、うちのモンじゃあねえよな?」
青年はこくりと頷きました。
「一人か?」
こくり。
「何処から来たんだ? もし道に迷ったっていうんなら、送ってやれるかもしれん。地名だけでいいから、言ってみな」
すると、青年は困ったような表情になりました。
…地名が言えないということは、どこから来たのか自分でも分からないということなのでしょうか。
不思議なこともあるものだと思った三人でしたが、とにかく、このままこの青年をここに放っておくわけにはいきません。鷺の伝説はともかく、日が落ちて追いはぎや人さらいが出たら大変です。
「とりあえず…俺たちと来るか? これから帰るところなんだが…」
すると青年がこくこくと首を縦に振ったので、ティバーン達はこの青年を連れて帰る事にしました。
もちろん、この青年というのはリュシオンです。リュシオンは、エルランがくれた怪しげな薬草の効果で人間の姿になったのでした。
そして望み通り、憧れのティバーンに近づくことが出来ました。言葉が通じないという思わぬハプニングもありましたが、なんと、一緒に連れて行ってもらえることになったので、リュシオンはとても嬉しく思いました。
が。
帰り道はそれはもう、リュシオンにとっては大変な道のりでした。
まず、言語の違いを何とか乗り越えて、ティバーン達とお互いの名前を教え合うのに苦心させられました。
ですが、それよりつらかったのは、地面の上を歩くことでした。こんな長い時間地面の上を歩き続けるのは初めてで、途中でリュシオンは倒れてしまい、ティバーンに横抱きされて屋敷まで連れ帰ってもらう始末でした。
そんな自分の貧弱さを、リュシオンは恥ずかしいと思いました。そして、自分に親切にしてくれるティバーン達に心から感謝しました。
どうやら、ティバーンはこの辺りの土地を治めている、けっこう偉い人のようでした。
リュシオンには行く当てがないらしいと感じたティバーンは、好きなだけここにいるといいとリュシオンに言いました。

この話、初期段階ではネサラ様が出ていましたが、あまりに存在が空気だったので、出演取り消しとなりました。
期待されていた方がいらしたら、すみません。

ファイアーエムブレム::蒼炎・暁 | 2007.09.25 21:30

Comment List

管理者にのみ公開されます。

by 非公開 2016.08.09 00:55 Edit

Post your comment

投稿フォーム
Name
Mail
URL
Comment
Pass
Open?
Key
Key:nWy3Y9
save
submit