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暁現代パロ(12):俺と姉貴と父と義父・6

義父が来る前の話。ちょっと長いです。
 
続き
 
あれは、半年くらい前のことだった。
今になって考えると、父さんやミカヤの言動には、何だかおかしな所はあったように思う。
でも、俺は全然気づかなかった。全然分からなかった。
だから、あれはまさしく青天の霹靂だった。

…いや、寒風吹きすさぶ冬の日だったんだけどさ。

土曜日、朝の午前7時。
休日であっても、俺の寝起きは平日とそう変わらない。いそいそと起きて洗面して、それからキッチンで朝ごはんを作り始める。
俺が朝ごはんを作るのは、俺がうちで一番暇だから、というのもある。ミカヤは受験を控えているし、父さんは忙しい。
だが最大の理由は、うちで一番まともに料理が出来るのが俺だから、だ。
父さんは料理をしない。というか、出来ない。ミカヤと俺が小さい頃は作ってくれていたが、もう壊滅的に下手だった。
昔はそれが普通なのだと、少なくとも俺は信じていた。けれど、小学生になってからそうじゃないことに気づいて、俺の方から率先して練習し始めた。父さんの仕事が忙しくなり始めていた頃だったし。
独学でもどうにかなるものだったし、中学に入ってからはムワリムさんに話を聞いたりして、もっとましなものを作れるようになった。
「おはよう、サザ」
ミカヤがダイニングに姿を見せた。郵便受けから取ってきた新聞を食卓においた。
ミカヤは今年受験生なのだが、受験生にありそうな張りつめた雰囲気が微塵もない。勉強は真面目にしているし、模試の結果も問題ないからかもしれないが、何だか受験生じゃない俺の方が心配させられてしまう。
ちなみに、ミカヤは料理をしない。出来るけど、絶対にしない。料理をするくらいなら、俺が帰ってくるまで空腹を我慢するくらいだ。で、そのあと俺に文句を言う。なんとも理不尽な話だけど。
「サザ、お父様は?」
「まだ帰ってない」
「そう」
昨日の晩は父さんが帰ってこなかった。出張ではない筈だし、外泊するとも聞いていない。こっちから連絡しようにも、父さんは携帯を持ってない。職場に電話をかけるという手もあったけど…切羽詰まった用事でもないから、何だか躊躇われて結局しなかった。
こういうことは初めてで、俺は昨日の夜から戸惑っている。
「なあミカヤ、父さんどうしたんだろう…」
「何が?」
「だって、結局昨日帰らなかっただろ? どうしたんだろう…」
「やあねサザ、決まってるじゃない」
「何の事だよ?」
「分からないの? 貴方もまだまだ子供ねえ」
「???」
と、その時、俺とミカヤの会話に電話のベルが割って入った。
「サザ、電話出て」
「俺、ネギ切ってるんだけど…ああもう、分かったよ」
朝のニュースをチェックするミカヤを尻目にして、俺は廊下へと小走りで駆け、電話に出た。
「はい、もしもし」
『…えっ?』
電話の向こうの声は、若い男のものだった。だけど、反応が何だか変だ。
「もしもし?」
『あっ…………いや…すみません、間違えました』
ぷつり。
電話は切れた。
何なんだろうと思いながら俺はキッチンに戻り、朝食の準備を始める。ミカヤの腹の音がぐうと鳴っているのが聞こえたので、あんまり準備が遅れると危険だなと俺は思った。
挽肉を取り出してボウルに入れ、調味料を加えて素手で混ぜ始めたところに、また電話が鳴った。
今度ばかりはすぐには応対に出られそうにない。俺はミカヤに言った。
「ミカヤ、電話出てくれ」
「はーい」
いつも、そんな風に物分かりが良ければいいのになあ…俺はそう思った。
「はい、もしもし。……あの、もしもし? …?」
ミカヤはすぐに戻ってきた。
「おかしな電話だったわ。間違い電話みたいだけど」
「あー、俺が出たさっきの電話。あれも間違い電話だった。同じ人かな」
そんな事を話した後、ミカヤはニュースを観る方に戻った。
俺が肉を混ぜ終え、手を洗い終わったところに、また電話が鳴った。俺が応対に出て行くと、さっきと同じ男の声だった。
「もしもし?」
『……あの………セフェラン様は…お帰りになっておられるでしょうか?』
怪訝そうな口ぶりが少し気に掛かったが、電話の相手は父さんに用があるらしかった。仕事関係の知り合いだろうか?
「ああ、父さんですか? 今留守にしてるんですけど」
『な、と、父さん!?』
電話の向こうの男は、かなり驚いているみたいだった。どうやら、父さんが子持ちであることを知らなかったらしい。まあ、父さんは友達いないし、見た目がかなり若い。子持ちだとは思いもよらなかったとしても、無理はないんだろうな。
「あの…もしもし?」
『…あ、す、すまない』
「父さんが帰ってきたら、かけ直すよう言いましょうか?」
『いや、その…それはいい』
「いいんですか?」
『ああ…本当にいいんだ。とにかく、朝早く失礼した』
「はあ、そうですか。それじゃあ…あ、そちらのお名前は…」
俺が相手の名前を聞く前に、電話は切れてしまった。
だがその直後、父さんが玄関のドアを開けて帰ってきたのだ。
「ただいま、サザ」
「お帰り、父さん」
父さんが帰ってきたと知って、ミカヤも廊下に出てきた。
「お帰りなさい、お父様」
「ただいまミカヤ。二人とも、昨日は帰らなくてすみません。電話の一つもしなくて」
「別にいいけど、仕事かなんか?」
「まあ、そんなところです」
父さんは少し疲れているようだったが、何だか機嫌が良さそうだった。
「父さん、どうする? ご飯が先か、それとも風呂に入るか」
「お風呂はいいです。ご飯をもらいます。今、着替えてきますから」
「そうだ、父さん。さっき父さんに電話があった」
「私に? どなたですか?」
「分からない。名前聞く前に切れちゃったんだ。でも、結構若い男の声だった。父さんは帰って来てるか、って…」
「…ああ、その電話ですか」
父さんは電話の相手に心当たりがあったらしく、笑顔を浮かべた。何でそこで笑うんだろう。
「父さん、相手分かるのか?」
「え、ありがとうサザ。その電話の件に関しては、私の方から後でかけ直しますから、朝食の支度をお願いしますね」

続きます。
ところでこの現代パロでは、キャラクターの年齢をゲーム本編より少し下げています。いや、殆どのキャラは年齢明らかになってませんが。
年齢を下げた理由は、アイクをまだ未成年にしておきたかったからです。あと…ネフェニーにセーラー服着せたかったからです。

ファイアーエムブレム::暁現代パロ | 2007.07.30 18:04

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