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暁現代パロ(10):俺とお前とあの野郎・2

1の続きです。
 
続き
 
露天風呂の掃除はよく行き届いていた。ま、うちの従業員は結構優秀だからな。
入浴客が全くないのは、オーナーとしては残念だが、一個人としては喜ばしい。リュシオンの裸を他の男に見られなくて済むからだ。たまに他の客がいる時に入ろうもんなら、変な目で見る客がいる事がある。
だが、当のリュシオンにはそんな自覚は全くない。下手にこっちから指摘しようものなら、リュシオンは俺に腹を立てるだろうから、俺からは何も言わない。
でもなあ…これを変な目で見るなと言うのは、無理があるだろう。
俺は露天風呂の縁によりかかりつつ、隣のリュシオンを見やった。
小さい頃から変わらず色の白いリュシオンの肌が、湯に浸かったせいでほんのり上気している。髪をまとめたせいで覗いているうなじとか、首筋から肩にかけてのラインはやっぱり女に比べれば少し骨っぽいが、しかし扇情的だった。とうに見慣れたつもりなのにも関わらず、思わずこっちの喉が鳴りそうになった。
ああ、この首筋にキスしたい。だがそんな事しようものなら、再びこいつと絶交の危機に陥るのは目に見えている。前回は俺が散々土下座した事で危機を回避出来たが、二度目はそうはいかないかもしれない。
「リュシオン、リアーネは元気か?」
「ああ…今は高校受験ですぐ忙しくなるだろうから、その前にお前の所に顔を出したいと言っていた」
「そうしてくれ。あいつが来るとニアルチの奴も喜ぶしな…ところでお前、この間の話、ちゃんと考えたか?」
「何の話だ?」
リュシオンが首を傾げた。
「高校卒業したら、ここで一緒に暮らさないかって話だよ。この前話したろ?」
「ああ、あの話か。やっぱり本気なのか?」
「もちろん。なあ、俺と一緒にこの旅館やっていく気はないか? もちろん、声楽の仕事の方は続けていいんだぜ」
「でも、そうしたら私は忙しくて、殆どお前を手伝えないと思うのだが」
そんな事は解っている。
リュシオン当人がやりたがっている限りは、俺の方も、声楽の仕事を辞めろとは言わない。そんな事を言って、こいつの父親や兄貴と喧嘩になれば(どちらも人と喧嘩するような気性の持ち主じゃないが)、同居に反対される可能性がある。それに俺自身、こいつの歌は嫌いじゃない。
「俺と一緒に旅館をやっていく、って言っても、俺と同じ事をやってもらうつもりはないんだ。人には向き不向きがあるからな」
「なるほど…」
「真面目に考えてくれよ。俺は本気なんだからさ」
それから俺が畳みかけるように言葉を続けようとしたところで、浴場から露天風呂に続くドアが開けられるのが聞こえた。

ネサラ:20歳

昔なじみ設定を使う為にこうなりました。3歳以上離れてしまうと、さすがに無理があるかなーと思いまして。

何か今回、現代パロの中でも気合いの入りっぷりが半端じゃないですね。でも美人の描写はほんと難しい。

あの人は次回で出ます。

ファイアーエムブレム::暁現代パロ | 2007.07.08 14:30

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