2の続きです。
客が来たのかと思って、俺とリュシオンが振り返る。
そして俺の機嫌は悪くなった。
「よう、ネサラ」
「何だ。あんたか、ティバーン」
普通の客ならともかく、よりによってこいつとは。他の風呂に行けばいいものを。
「ネサラ。お前、こんな時間にゆっくり風呂に入っててもいいのか?」
「自分で見ないと分からない事もあるもんでね。あんたの方こそ、いつも連れてる二人の姿が見えないが?」
「ああ、あいつらなら後で来る」
ちっ、あいつらも一緒かよ。ぞろぞろと鬱陶しいことだ。
一般客が、こいつの無駄にでかい図体のあちこちに走る傷跡を目にすれば、てっきりこいつを某自由業の関係者かと勘違いしそうになる。
俺としては、それを理由にこいつを締め出してしまいたいぐらいだが…正直客を選んでられないというのが、今のうちの経営状況だ。
ティバーンはどうだか知らないが、俺の方は正直言って、こいつの顔すら見たくもない。しかし何せ向こうは客だから、否応にも出くわしてしまうことは多々ある。だが、こうして風呂場で遭遇するのは、これが初めてだった。
「ネサラ、どなただ?」
リュシオンが俺の腕をつついてきた。
…そうか、こいつはティバーンに会うのが初めてなのか。
「こいつは、まあ、何でもねーよ」
「何でもないとはなんだ」
リュシオンが俺に噛みついてくる様を、ティバーンの奴が眺めているのを感じる。さっさと上がって仕事に行きやがれ。
「お前ら仲いいな。友達かなんかか?」
と、ティバーンが訊いてきた。放っとけばいいのにリュシオンはわざわざティバーンに向かって、
「私はこれの昔馴染みです」
と、答えてみせた。
そう言ってしまった以上、俺の方でも、リュシオンを紹介しない訳にはいかない。
…何か嫌な予感を覚えないでもなかったが、渋々俺はティバーンの方を見て、幼なじみを紹介してやった。
ウルキ:22歳
ティバーン様:23歳
ヤナフ:24歳
ラフィエル:24歳兄上は結婚間近です。
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by 非公開 2016.08.09 00:37 Edit